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lawollaの吐き出すコトノハ集め。Since→2007/04/06
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グダグダと長いお話。
架侘からのリク(いつのよ自分)
   アヤちゃんシキくんコウちゃんの話 
遅くなって申し訳ない!  


えっと…はい。
彩も色も紅も出てきます
いかんせん長いのでお暇つぶしにどうぞって感じです…ι


シキとコウに至っては名前出てきてないしなっ(えー
アヤのみフルネーム…






暑い。

夏日。

暑い。


          ウィンドベル・カラーズ

 

 


セミの声が、する。
しーいしーいしーいしーい
大きくない音。
嫌いじゃない。

今年新調したサンダルが、軽快だけど抜けた音を刻む。
たす、とす、たす、とす
大きくない音。
嫌いじゃ、ない。

風鈴とかが、好き。
でもハードロックが好き。
音が好き。
寂しいのが嫌い。
寂しそうな人見てるのは、もっと嫌い。

キャミの上にノースリのシャツ。
色のバリエーションはあっても最近は大抵この恰好。
日焼けを気にする性格は持ち合わせていないし、袖は暑くて嫌いだ。
「…今でも、暑いけど」
自分以外誰も聞いていないつぶやき。


ふとセミが静まり返る。
たす、とす、たす、とす
「……」
たす、とす、たす、とす
また鳴き始める。
たす、とす、たす、とす
しーいしーいしーいしーい
たす、とす、た。


豪邸。しかし、上品な。
(こーのいけ、だっけか)
鴻池、と書いてある表札。
派手な黄色い服を着た少女は、落ち着いたこの家に似合わない。
焼けた肌も、閉鎖的な空気と反発している。
(こーのいけあや、だよな。うん)
アヤ、アヤといつも呼んでいるから、違和感があった。
鴻池彩。
随分と大仰な名だ、と思った。大仰の意味もよく知らずに。

 

「あつい、な」

 

ジュビロがバタバタと飛び回る。
殺伐とした物置(もっとも、彼女はここをアトリエと言い張るが)に舞う青色。

羽が散るからやめてほしいな、
でも籠に戻るのは嫌だろうな、
水もう温くなっちゃったのかな、
だったらまた汲んでこなきゃな、
でも死ぬほど渇いていないな、
ああ暑いから降りるの嫌だな。

本当は別に構わなかった。
階下がそんなに暑いわけでもない。
むしろここの方が無風で蒸している可能性が高い。
が、ぼうっと青い鳥を見ていた。
こうして隔離されていると、感覚がおかしくなるのかもしれない。
そうじゃなくて熱中症の軽いヤツか、と思った。
どっちでもいいけど、と思った。

 

「人いんのかよ…」
あまりに静かな屋敷に不気味さを覚えて、独り言。
じわ、と汗をかかせる空気が鬱陶しい。
暑くするならさっさと熱せばいい。こう回りくどい真似をしなくともいいはず。
日本という島の湿気を恨む。
「気配ねーし」
一息に入れば良いものを少女は躊躇う。
黄土色や朽ち葉色を植木の濃い緑が覆っている。
少年のような口調で不気味さを紛らわせる。
ショートヘアをぐしゃりとかき混ぜた。
鴻池彩が、遠い。

 

遅い、とそれだけ書かれたメールを受け取って、少年は苦笑いする。
来てほしい、なんていわれた覚えはない。
いつだって連絡は彼女から。「遅いんだけど」だけ。
それでも行ってしまう僕はどうかしてるなぁとぼんやり思う。
まぁ丁度行こうと思っていたところだ。
良いか、行こう。
自転車の鍵と十得ナイフと財布。
それだけ持って団地から出た。

 

アースカラーといえば聞こえは良いかな。
うん、多分それが一番上品に聞こえると思う。
地味なだけなんだけどね。
思い出す屋敷には色味が少ない。
枯れゆく年代が建てる家だからしょうがないか?
「…あは、辛辣がうつったかな」
少年が、自転車をこいでいた。
「やだなぁ」
上り坂に差し掛かり、ギアをかえる。
カチカチッ
「僕は、」
ぐん、と踏み込む。
「アヤ程、」
ぐん
「いじわるじゃ、」
ぐん
「ないのに、」
ぐん
「なぁっ」
腰を浮かせてこぐ。
視界が開けて、街が見渡せるようになった。


黄色い服の少女は、まだ豪邸を睨んでいた。
と、2階の嵌め殺しの奥に揺らぐ陰を見つける。
「お」
アヤ生きてんじゃん、と小さく言った。
そして、近くの日陰に座り込む。
ウエストポーチからペットボトルを取り出して開けた。
ぷしー。と間抜けな炭酸が逃げる音。
再びポーチを探り、イヤホンを引っ張り出す。
絡まっているのは気にしない。
と、思い出したように三度ポーチを漁る。

 

「あつい、な」

 

藻の育つスピードが速まっている。
3ヶ月に1回位のペースでやっていくつもりだった水槽の掃除は、諦めた。
別に、ウラワ自身は困っていないようだった。
石をつつき、水面で回り、時折緩やかに尾ひれを振る。
キンギョソウが伸びている。黄緑の茎に、金魚のエサが引っかかっていた。

ガンバの元気が無い。
それは知っていた。梅雨辺りからしなびている。
やっぱり湿気は良くなかったのか。
しかしこればかりはアヤの改善できる事ではない。
日本という島の湿気を恨む。
蜂蜜を固めた様な棘が霧吹かれた水に光っていた。

 

曲が終わって、立ち上がる。
始めからそのつもりだったのではない。たまたまだ。
黄色いシャツには羽虫が2匹ついていた。
注意深く払い落とす。さよなら。
「あー…」
帰ったら何やろっかな。
宿題が無いわけじゃない。けれどやる気にはならなかった。
もうほとんど刺激の無いサイダーを飲みほす。
イヤホンを外す。帰りのBGMには事欠かないからだ。
たす、とす、たす、とす
しーいしーいしーいしーい
たす、とす、たす、とす
しーいしーいしーいしーい
目に焼きつくような黄が去ると、そこはまた閉鎖的に静まり返る。
遺されたのは、ほんの少しの風とよれた包み。
地味な色の建物と、濃緑の梢。

 

かつては小高い丘だった坂を自転車が下る。
濃い茶色の少年の髪がなびく。
薄手な白いシャツの裾がはためく。
目をしばたいて、風圧を堪える。
チェーンの回る音。
と、目に飛び込んでくる大きな建物。
色は、いつ見ても地味で。
「…あは」
つい先ほどと同じように笑う。自嘲的な笑みだった。
来慣れた家。(誰もいないように見える)
見慣れた木々。(さわさわ、と静けさ強調)
聞き慣れた強がり。(トゲで覆ったやわらかさ)
嗅ぎ慣れた絵の具達。(嫌だったのに、いつの間にか)
触り慣れた彼女のペット。(嫌がられたのに、いつの間にか)
想像し慣れたアトリエの様子。(あつくて汚い好きな場所)

 

チャイムも鳴らさず門を開けようとする。
と、動きが止まる。
見慣れない物を発見したからだ。
「んっ?」
屈んで拾い上げる。
よれっとなったクラフト紙。
掠れて判押しされている店名。
「あー、」
送り主が分って、少年が笑う。
何で入らなかったのかな、と思った。
そして以前の自分を思い出して、もう一度笑う。
「…あは」
心底面白そうな、笑い方だった。

 

アヤが気付いたかどうかは知らない。
でも、誰か拾っていくだろうと思う。
アヤ、家族と仲悪いんだっけか。
まずいことしたかなー。
まぁ、いっか。
きっと誰かが届けるっしょ。
「大丈夫だよなっ」
彼女は深く考えない。
自分が贈ったのだと知らないかもしれない。
見てすぐ放り投げるかもしれない。
別に、いい。
「あ、投げちゃいやかも」
…ガラスだし。とつぶやく少女。

寂しそうな人が嫌い。
やめて。
ほら、こんなにキレーな音。

「あ。平気だ」
あいつがいるから。
そこに自分が入り込めないのは悔しいけど。
彼女が寂しくないなら、いいや。
あいつは物が壊れるのが嫌いだから、投げさせたりしないはず。

 

「あつい、な」

 


ポケットの中でバイブを感じる。
メールだ。
[件名:なし]
[送信者:彩]
[本文:
 遅い 
       -END-]
思わず吹き出してしまった。
「わお、短絡的ぃ!」
彼女らしい。
てか、僕呼ばれてないって。と苦笑。
と、もう一通。
[件名:なし]
[送信者:彩]
[本文:
  暑い
       -END-]
僕は愚痴聞きマシーンか、とツッコミを入れる。
数秒後に、大体そんなものだと思って凹む。
今行くよ。

 

「…遅い」
もうずっとこればっかり言っている気がする。
多分(いや絶対)気のせいじゃない。
「気のせい、気のせい」
呼んでもいない奴待つなんて可笑しいでしょう、と思った。
矛盾してる。
でも、絶対来るよ。それは確か。
「あたしは知ってるもん、ね」
ウラワが泡をつついている。

 

パタンと携帯を閉じる。
倉庫は2階だ。…アトリエ、だったか。
ジュースは右手、包みは左手に。
「こんにちわー。生きてた?」
むせ返るような画材臭と熱気。
バタバタとオウムが飛んでくる。
「うわっ」
荷物が落ちかけて焦った。
「…っと、アヤさぁん?」
イスに座って動かない少女に近づく。
……寝てる?
セミロングの髪が微かに揺れる。
血管の透けたまぶたが震える。
くつくつくつ、と堪えきれずに喉が鳴っていた。
「アヤー」
ぱっと寝返りを打った少女が言い捨てる。
「何? 遅いんだけど」

 

バレるってわかってたから寝たふりをした。
笑い顔を見られないように体を反転させた。
でもきっと気づいてる。
むかつくなぁ。
でも、やじゃないな。

 


またこの子はしょうも無い事を…!
そう思った後、自分にあきれた。
「僕は君の保護者じゃない」
末期だ。
不快じゃないけど。


「知ってるよーそんなコト」
それともシキは今知ったの?ばっかみたい。
「あのねぇ」
そういう物言いは良くないってこの前…!!
「うー。 …ごめんね、許して?」
直すからさあ、ね?
「判ればいいんだよ判れば」
だから気をつけてね
「ありがと、ママやっさしー」
ママー、だぁいすき!
「演技かお前っ」
珍しく素直と思ったら。
「あははっ」

 

セミが鳴いてる。
「あつい、な」

 

「そだ、イイモノもってきたよ」
「んぁ?」
正確には僕じゃないけど、と前置き。
かさこそと紙擦れの音。
「ほら」
精緻な紋様、澄んだ色合い。
少女は嘆息して眺める。
ウラワの水槽で揺れる光が、きらきらと反射されていた。
そっと持ち上げると、澄んだ音がした。

 

少年の手によってそれは吊るされた。
灯り取りの嵌め殺しには掛けられなかったので、苦労した。
周りの箱を除け、通気窓の近くに設置。
ホコリだらけの窓を開けると、微かに風が入ってきた。
小さなクモが巣を千切られて飛んでいった。

 

りん。
り、りん。
「あつい、な」


「お礼、言わなきゃだね」
「…ん?」
くれたのコウでしょ、と言った。
確証は無くとも自信はあった。
「だね」
言いに行けば、と言う少年に笑ってしまった。
どうしてこう上手いのだろう。
2学期は行こう、と思った。
「学校いつから?」
「27日だよ」
ふぅん、行けたら行く。
興味なさ気に言う。


「あつい、な」

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COMMENT
元気ですか?
お久しぶりですねぇ。
夏休みはどうお過ご氏でしょうか?
ってかこのブログはMacintoshに
優しくないのね。超絶文字化けしてるよ。
ちゃんと整備して下さいね。
まぁいいや。まぁそれにしても
このブログは粋な事してるね。
私には出来ないですよww
自分のポエム書くとかねwwww
羞恥心があるのでややらないっすよ普通w
その辺はまぁ君の凄い所だけど。
じゃあ体を壊さない程度に勉強
頑張って下さいねwwそれでは。




PS シャビイ本ってかトラコフ
完成致しましたw印刷所にも何とか
通す事も出来ましたww編集大変だったけど
大丈夫そうです。ご協力ありがとでしたw
紫煙 URL 2007/08/13(Mon)12:05:15 編集
はわゎゎゎあぁぅぎょあ!
しっししし紫煙サン!? びっくりー!
こんな辺鄙なところにナニユエ姫御前が?
うっきゃー!ハズいようっぎゃー!(落ち着け

…文字化け?
はひぃ、この前直したのにっ;
すみませんですー、うぅ。
あれですね、 恥 の 上 塗 り 。
もう羞恥心とかどうでもいいよ。
いや良くないけど。
恥ずかし魚雷!(どかーん)←
 ……HP作るのめんどくてブログ形式だなんてそんなっ

紫煙サンこそ体壊さないでくだーたい。
不規則な生活は毒だぞ! ベンキョも頑張ってね。
僕はしないけどなっ(えええ


PS返し
おお!脱稿おつです♪
醜くく見難い原稿すみません…
完成品見てええ! (除・夙凪の所)
きっと美麗なんだろうなぁ~(ぽわわん
Hig URL 2007/08/13(Mon)12:22:45 編集
体壊すなんてもう慣れっこさw
なんかレスを見ると
アテクシとHigは生活時間帯が
ほぼ一緒だよっていうさ。
17分後にレスってあるいみ
ミラクルって言うね。
勉強とか懐かしい響きだ…(遠い目
トラコフは編集大変でしたよ。。
まぁ入稿完了致しましたが。
ではこの辺でアテクシは失礼しますww




PS
どらっぐとりぃとめんとの方に
片思いリンク貼って良いですか(ぇ。
つか張ります(^^)強制イベントw
紫煙 URL 2007/08/14(Tue)11:01:34 編集
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