僕はそれを志だと思うよ

もっと良いはずだと
より良くなれるはずだと
可能性を前提にして
だから不満なのだと
此処に無いものを見通して
得られるはずだと
得られないのは喪失だと
持たないものを悼めるのは
明るく健やかなものと
ほとんど同じなのではないかと
そう思うんだ

諦める
が
明らめる
であること
を
蹴って
おおよそ怒りと呼べるくらいの
あるいは悲嘆と称してもいい
そのエネルギーを

ああ、
こうして素敵だなと思ってしまう

だから僕はこのままなんだ
踊り場で踊る僕を遥か下に
どうか怒れる人
嘆ける人
どうか

あなたが在りますように

この
使い勝手のよいモノが
使い勝手のよい場所に暮らしていると思うと
うんざりする

この
邪魔で仕方ないモノが
邪魔で仕方ない仕組みを動かしていると
いたたまれなくなる

この
便利さを失いたいと思う
より正確に言葉を選ぶなら
もっと便利なモノに代替されてほしいと願う

仮定の話をする

少女を護ったとして
それは人間の幼体を尊重したことがヒロイックなのか
母体たり得る肉を保全したことがか

一元ではなかろうが
均等でもなかろうと

恵まれながら
省かれながら

悲しまぬ夜明けに
憤らぬ街に
焦らぬ閉塞に
妬まぬ席に
怯えぬ痺れに
あなたの光明としての詩が霧散するなら
その手帳は箱庭だ
そのボールペンは補助輪だ
その喉仏は腫瘍だ

満たされて凪ぐ人よ
晴れやかにケを得る人よ
大多数であることもまた
あなたがた(わたし)を穿ちませんように

救われなかろうという想像通りの晩だった
わたしにとって雑多な微良が
誰かの銘になるのだと知っている
愛されてくれと願う
愛さずにいながら
この希求に、しかしながら
愛以外の名前も似合わないと思う

箱庭を組み上げるそのひとの
砂に半ば埋まった鯨が
わたしであればいい
躊躇う爪の先が
運河を描いて
実の成る木を見せて
顰めた顔をわたしから隠して
綺麗なものをここに晒そうとして

髪が女の命と言うならば
痛めつけて飾るカラーリングとパーマネント
忘却が二度目の死と言うならば
私は先に殺されていた
失われた叡智を何処かに濁して
老いた女が私の名を間違える
甘やかしていた日々は
脳内少女には持ち得ない記憶
苛立ちと不安で
老いた女が声を荒げる
また来週ね、と最後に言ったのは
一ヶ月前
嘘だとして、嘘であるとして
罪に問う存在は
あるのだろうか
ええそうよ、あたしよ
そっか。そうなんだね。
罰を望む存在が
あるのだろうか
ええそうよ、あたしよ
そうなの。へえ。そうなのね。
こんにちは。
ええそうよ、あたしよ
仕事してるよ。
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
そうなの。
ええそうよ、あたしよ
ありがとう。
ええそうよ、あたしよ
そうなのね。
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
お水飲んだ？

ええそうよ、ええ
ええそうよ、あたしよ
はいこんにちは。
ええそうよ、あたしよ
今日はお休みなの。
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
よく覚えてるね！
あのときのパパったら、もう。
美味しかったねえ。また行きたいね。
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
ええそうよ、あたしよ
お風呂沸いたよ。
ええそうよ、あたしよ

死にたい子供を崇めて
聡い言葉に可愛いねって笑う
一生懸命に色気を見出して
失敗を性的消費するような
不在証明は三百円しますか？
ドキドキするなら返せばいいのに
返せばいいのにね
返せるならね
ボトルネック
自己嫌悪は甘やか
ハラハラするなら借りなきゃいい
もう遅いから言わないでほしい
大好きだけど死にたくなれない
月は見えないし語れる雑学もないよ
明日も定期券で移動します
左利き諸兄、時計はどちらにしますか？

日
ヒト
火取
ひとりで
罅砦
響く鳥で
日々草取りで
響く悟りまで
日々腐りまで
退く去り間で
低さ迄
轢く様
曳馬
暇
飛

言葉足らずを演出にするなよ
不器用さを素直さに衒うな
意味不明なものは意味不明なままで
わたしはあなたを馬鹿にしてはならない
理解が及ばぬものを尊ぶな
逸脱を誇るな
普通になりたいと希いながら
剃刀を手首に滑らせる
矛盾を愛するな
没個性を望むことの
なにがおかしいのか
分からないことを分からないと言う
それだけのことを
恥ずかしいと誤解している
わたしはあなたに親切でありたい
あるべきだと信じている
易しい言葉で
詩情を抱くことはできるはずなのだ